冷えるので久しぶりに腹巻を使ってみた。ゴムで締め付けられるやつなのでそこまで気持ちのいいものではないことを思い出した。もう使わん。
その内見ようと思って放置していた映画「悲しき口笛」を視聴した。思ってたよりちゃんとストーリーが面白かった。
これは個人的な偏見なのだが、なんか昔の映画というか物語って常識がずれてたり、どうでもいい問題や騒動で引き延ばされたり、悪役が浅かったりちょろかったりすることが多いイメージがある。が、この映画はシンプルに今の感覚で見てとても面白かった。ストーリー構成がちゃんと練られているのはもちろんなのだが、戦災孤児と帰還兵、戦後の苦しい生活という背景に血が通っているのがでかいと感じた。安穏とした生活で何したいかに悩んでいるような現代の若者の自分からは逆立ちしてもひりだせない話だ。
物語構成という点で言えば、兄妹の再会という最重要ファクターが冒頭時点で示されていてそれが最後まで貫かれているのがしっかりしている。中盤までメインになる京子と父との生活、京子父の治療、京子の脱出といったサブクエストと有機的に繋がっているのも良くできた作りだ。
意外にも、美空ひばり演じるミツ子が売れるといったことはゴールにはなっていない。にも関わらず、その歌唱の才能と兄から授かった「悲しき口笛」が物語全編を取り巻く鍵になっている。一旦離れ離れになった京子も兄ケンも、ミツ子の歌声の元に引き寄せられて大団円になる。美しい!好き!自分はアイマスだのなんだのでアイドルものの文脈に慣れてしまったので、歌というファクターをこういう形で使う物語はちょっと新鮮に感じてしまった。美空ひばりの歌唱が素人でも聞けば判るくらいシンプルに上手すぎるから贅沢な才能の使い方だ。
悪役であるところの吉村らが一度ならず二度も京子を連れ去るのは勘弁してくれよと思ったが、ミツ子のために労働者たちが立ち上がるところは熱かったので納得した。正直なところ、序盤中盤に彼ら家無しの人々が出てくるシーンは何度かあったにも関わらず、自分はあの救出シーンまで一勢力としての認識していなかった。そういう人々のことが見えていなかったのを自覚させられた節がある。
物語の面白さに加えて、街に孤児、家の無い人々、帰還兵等々が当たり前のようにいた戦後の空気の一端が知れたのが良かった。東日本大震災とてもう14年近く前なのに、この映画は戦後4年の公開なのだから、当時の雰囲気の一端を琥珀化石のように閉じ込めた貴重な資料なのは間違いないだろう。
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