だん‐トツ【断―】

(「断然トップ」の略)他を大きく引き離していることをいう俗語。「―の優勝」

「広辞苑」第四版より

「ダントツ」という言葉は、もうすっかり浸透してしまい、ともすれば日本に昔からあった普通の二字熟語か何かのようにさえ感じる。しかし知っている人は知っての通り、これは「断然トップ」を略した語であり「トツ」は「トップ」の意味である。古来の言葉でないことに疑問を挟む余地はない。ないのだが……

なんというべきかこの言葉、そう、あまりに「それっぽすぎる」。そのわけを考えよう。

起源が何であれ、我々が初めてこの言葉を耳にしたとき、思い浮かべたのは「top」などという英語ではではなく、明らかに「突出」の「突」か、そうでなければ「凹凸」の「凸」ではなかったか。日本語圏において「トツ」という音が与える「周囲に対して抜きんでている」という印象があまりにも強く、完成度が高すぎる。そういえば「くに」などという単語もあった。これも偶然の一致でしかないだろうが、これが意味するのは中心である畿内から離れた国ということだ。普通から離れた、というイメージがぬるりと付いてくる。

「トップ」を「トプ」ではなく「トツ」と最初に略した人間は明らかにこれを狙っていた。狙ってないとしても、気づいていた。「『断トプ』より「断トツ」の方が言いやすいしカッコいいし、それっぽくね?」――と。

近年では「断トツトップ」という用法が多く用いられ、それに呼応するかのように「断トツは『断然トップ』の略なので『断トツトップ』というのは間違いです」という指摘が飛んでくる。しかし上に述べた「トツ→突、凸」のイメージの視点から言わせてもらえば、「断トツトップ」はあまりにも自然だ。

「突」は「突き上げる」、「凸」は周囲より盛り上がっていることを意味するのだから、「局所的な一番」ではあるかもしれないが「全体の中で一番」という含意を含まない。だから周囲を引き離しているかもしれないが、さらに上もいるかもしれないという印象になってしまう。ということで、そこに「トップ」という言葉も付け加えてみる。断トツトップ。文句なしの一番だ。周りを断然引き離して突出している。しかもどこを見てもそれより先を走る者がない。やべえよ。あいつには敵いっこねえぜ。あ、なんだって。「トップ」が重複しているからおかしい?うるせーんだよボケ。どうせお前みたいなのに限って「重複」を「じゅうふく」とか読んでるんだ。おととい来やがれ。